小さな異邦人 井塚章文の本棚

小さな異邦人

連城三紀彦の遺作集ということになるのだろうか。それにしてもなぜ今まで刊行されなかったのだろう。決して質が悪いわけではない。むしろ一級品といっていい短篇集である。収録作品は『オール讀物』に2000~2009年に掲載された7篇。甲乙つけがたい作品ばかりだ。確かに他の作家とは違った雰囲気があるので支持を受…
日本を再発明する 井塚章文の本棚

日本を再発明する

優れた本だ。こういう本がよく読まれているというのは日本の読書人のレベルの高さである。もっとも日本論は皆、よく売れるのかもしれない。実は褒めたのは日本論というより国家論民族論というより高次の内容だと思ったからなのだが。そういう意味でタイトルは正しい。よくある再発見ではなく再発明で正しいのだ。しかしわか…
日本人に「宗教」は要らない 井塚章文の本棚

日本人に「宗教」は要らない

タイトルの意味は一神教から見れば日本人に欠けているのは宗教だが多神教徒である日本人には一神教は不要ということであろう。日本人はちゃんと生活や考え方が宗教的だというのだ。おそらく著者の本は「迷える者の禅修行」以来だと思う。前回は新潮選書でデビュー作だったのではないか。それに比べ今回のベスト新書は本とし…
セラピスト 井塚章文の本棚

セラピスト

今一番のノンフィクション作家は誰かと考えたら最相葉月ではと思った。なにしろテーマの幅が広い。一作ごとに新しい分野に挑戦している。これで彼女の作品を読むのは4冊目だがまるで別人ではと思ってしまう。中でも「セラピスト」が最高の出来だ。それというのも恐らく本人の関心が切実なものだったからではないだろうか。…
カラー版地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇 井塚章文の本棚

カラー版地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇

同じタイトルの3冊目は東京が結構高低差のある都市だという意味からか地形篇となっている。私は前の2冊は読んでいないのだがこれは面白かった。高低差ということは高い方は山、低い方は川だということである。勿論、山や川といっても深山幽谷というわけではない。だが数十メートルの高低差でもやはり崖は崖である。両者の…
レッドスーツ 井塚章文の本棚

レッドスーツ

いやあ、面白かった。いままでも小説の登場人物が作者に逆らうという設定はあったかと思うがこの話はテレビドラマの世界が実在したらどうなるかというアイデアで始まる。日本人SF作家が書きそうだと思った。でそのテレビドラマがスター・トレックのようなスペースオペラものなのだ。結果、毎週宇宙船のクルーたちから犠牲…
永山則夫 井塚章文の本棚

永山則夫

永山事件の裁判における精神鑑定書作成時に残された録音テープを元にした永山の伝記。優れた心理学者による歴史的な仕事でありそれを発掘した著者の作品もノンフィクションとして優れたもの。簡単にいえば殺人事件は偶然と永山の精神的欠陥によるもの。しかし後者ではあっても拳銃がなかったら殺人事件はおこらなかっただろ…
(株)貧困大国アメリカ 井塚章文の本棚

(株)貧困大国アメリカ

「ルポ貧困大国アメリカ」正続に続く完結編。いみじくもタイトルに㈱が付いたように企業が支配しているアメリカの現状を紹介している。こういう状態をコーポラティズムというらしい。特に槍玉に上がっているのは毎度おなじみモンサント社だが別にここだけが悪者というわけではない。1%が99%を支配するという構図が出来…
『青鞜』の冒険: 井塚章文の本棚

『青鞜』の冒険:

サブタイトルがうまく本書を表現している。著者森まゆみは伝説の雑誌『谷根千』の元編集人。それだけに『青鞜』の評価は辛辣だ。要するにお嬢さん平塚らいてうの個人の雑誌だったということか。しかし地に足の着いた『谷根千』は雑誌としての評価は高くとも社会に与えた影響という点では『青鞜』に負ける。そこはちゃんと理…
完全なるチェス 井塚章文の本棚

完全なるチェス

チェスの世界チャンピオンになった人物の伝記なのだが別にチェスを知らなくってもかまわない本だ。それだけこの主人公ボビー・フィッシャーが興味深い人物だということである。移民のシングルマザーの子供であるボビーは最近流行りの言葉でいうと発達障害のある天才ということになるのでしょう。異常な集中力持続力により若…
絶景鉄道地図の旅 井塚章文の本棚

絶景鉄道地図の旅

「地図から消えた地名」と同じ著者の本。前の本は新旧地形図で消えた地名表示を扱った本だったが今回は地形図から読み取れる鉄道の変遷といった内容。かっては時刻表と地形図から旅行を計画した者からするとなつかしい内容である。 「貴重な地図を多数収録」はいいのだがそこは毎回書いているが新書ゆえの制約がある。拡大…
藤森照信×山口晃日本建築集中講義 井塚章文の本棚

藤森照信×山口晃日本建築集中講義

3ヶ月で4版とは驚いた。やはり著者が人気者だからか。藤森照信は最近読んだ記憶がないが動向は知っているつもりだ。山口晃は「ヘンな日本美術史」を読んだばかりだ。内容だがとても緩い。各地の名建築?の訪問記なのだが同行の編集者や訪問先のガイドをあげつらうのがお約束みたいでいいのかなあと思ってしまう。いろいろ…
天皇の代理人 井塚章文の本棚

天皇の代理人

なんか昔の小説を読んでいるようだった。時代設定の話ではない。第二次世界大戦が舞台の諜報活動というのはよっぽどリアルに描くかいっそとんでもな話でないと今時流行らないのでは。そもそも「外交秘史」といのは難しい。どこまで事実か普通はあたりまえだが知られていない。だからリアルかどうか評価のしようがないのだ。…
中国と 茶碗と 日本と 井塚章文の本棚

中国と 茶碗と 日本と

タイトルは難しい。読み終えればそういう話かと納得するのだが。どうして中国と日本の茶碗の文化は違いが出来たのかという話である。国宝の茶碗は中国製が多い。それでは本国ではもっと優れた作品が残っているのか。ところが日本で評価されるタイプの優品は中国に残っていないという。単純にいえばそれぞれの国の文化を含め…
紅白歌合戦と日本人 井塚章文の本棚

紅白歌合戦と日本人

紅白歌合戦という番組の歴史であり当然、歌謡曲の歴史であり戦後史そのもの。1951年の開始だから還暦を過ぎている番組がいまだに生き残っていられるのはなぜか。やはり一番は大晦日の放送ということではないだろうか。通常テレビを觀ない私のような人もこの番組で今年はどんな歌が流行りどんな歌手が人気があったのかチ…