哲学(1類)

日本人に「宗教」は要らない 井塚章文の本棚

日本人に「宗教」は要らない

タイトルの意味は一神教から見れば日本人に欠けているのは宗教だが多神教徒である日本人には一神教は不要ということであろう。日本人はちゃんと生活や考え方が宗教的だというのだ。おそらく著者の本は「迷える者の禅修行」以来だと思う。前回は新潮選書でデビュー作だったのではないか。それに比べ今回のベスト新書は本とし…
セラピスト 井塚章文の本棚

セラピスト

今一番のノンフィクション作家は誰かと考えたら最相葉月ではと思った。なにしろテーマの幅が広い。一作ごとに新しい分野に挑戦している。これで彼女の作品を読むのは4冊目だがまるで別人ではと思ってしまう。中でも「セラピスト」が最高の出来だ。それというのも恐らく本人の関心が切実なものだったからではないだろうか。…
永山則夫 井塚章文の本棚

永山則夫

永山事件の裁判における精神鑑定書作成時に残された録音テープを元にした永山の伝記。優れた心理学者による歴史的な仕事でありそれを発掘した著者の作品もノンフィクションとして優れたもの。簡単にいえば殺人事件は偶然と永山の精神的欠陥によるもの。しかし後者ではあっても拳銃がなかったら殺人事件はおこらなかっただろ…
池澤夏樹『ぼくたちが聖書について知りたかったこと』 中島駆の本棚

池澤夏樹『ぼくたちが聖書について知りたかったこと』

僕は特定の宗教を信じるものではない。それでも「論語」や「聖書」に惹かれるのは、それらが強烈な物語性を含むからだ。いや、それらは物語そのものといっていい。「論語」は孔子のルサンチマンの現れであると以前に書いたが、聖書の場合も同様で、旧約はユダヤ人の苦難の歴史であるし、新約はイエスの受難の物語である。い…
オオカミの護符 井塚章文の本棚

オオカミの護符

同名の映画の製作者が書いたオオカミ信仰のルポルタージュ。こう書くととんでもない田舎が舞台のように思ってしまうが実は舞台は作者の地元神奈川県川崎市でオオカミ信仰は今も健在なのだ。種明かしをすると東京奥多摩御岳山の武蔵御嶽神社の御嶽講のことである。そういう意味で同じ神奈川県の住宅から日本の近代の庶民のた…
三種の神器 井塚章文の本棚

三種の神器

「三種の神器」といえば、かってはテレビ、冷蔵庫、洗濯機で、「新・三種の神器」は車、クーラー、カラーテレビだった。それが今や誰もが持てるものとなって誰もが欲しがるものではなくなった。この6種類が私の育った家に登場したのは(三種の神器は鮮明な、そして新・三種の神器はやや不鮮明な記憶だが)ほぼ黄金の60年…
ダニエル・カーネマン心理と経済を語る 井塚章文の本棚

ダニエル・カーネマン心理と経済を語る

ノーベル経済学賞受賞者の文集。行動経済学に関心があったので読んだのだが心理学の本だった。これは詐欺でもなんでもなく著者は心理学者だから当然のことだった。簡単にいえば人間は忘れやすい生き物だということになるだろうか。幸福も不幸も永くは続かないのだ。だから金銭的な豊かさは絶対値ではなく増え続ければ幸せだ…
名字でわかる 日本人の履歴書 なぜ東日本は「佐藤」「鈴木」が、西日本は「田中」「山本」が席巻したのか (講談社プラスアルファ新書) 井塚章文の本棚

名字でわかる 日本人の履歴書 なぜ東日本は「佐藤」「鈴木」が、西日本は「田中」「山本」が席巻したのか (講談社プラスアルファ新書)

名字と姓は違う。かばねと読む姓は例えば徳川家康はみなもと(源)である。本書では姓は与えられたもので変えられず名字は勝手に名乗れたというふうに説明している。藤原ばかりなので伊勢の藤原は伊藤と名乗ったという具合である。もともと姓がなければどうしたか。よい田の持ち主は吉田と名乗ったと説明している。そして名…
坂本龍馬と謎の北極星信仰 井塚章文の本棚

坂本龍馬と謎の北極星信仰

面白かった。北極星信仰は通常北辰信仰というと理解しているが、かねがね興味があった。また千葉県に勢力のあった千葉氏が信仰していたことも興味を持っていた。ところが今回の本は坂本龍馬が信仰していたという話なのだ。両者を結んだの北辰一刀流千葉道場である。龍馬が道場の娘佐那と婚約したという話は有名である。それ…
アマテラス―最高神の知られざる秘史 (学研新書) 井塚章文の本棚

アマテラス―最高神の知られざる秘史 (学研新書)

天照大神として知られるアマテラスの実像に迫る本。ただどこまで学問的に正確かは不明。そもそも伊勢神宮という存在が謎だ。なぜ伊勢なのか。想像するに都からもっとも離れた場所かつ太陽信仰とのかかわりがあったのではないだろうか。関東でいえば茨城(常陸)の意味に近いか。また熊野が黄泉の国といわれるのに対して伊勢…
場所と産霊 近代日本思想史 井塚章文の本棚

場所と産霊 近代日本思想史

前提となる知識を持たずとも面白い論考というものもある。この本がそうだ。例えばプラグマティズム、著者の書いているそれと私の乏しい知識が一致しない。著者と同じだけの知識があるなら普通は読む必要がなくなる。たまにそれでも面白い本つまり知識ではなく考え方を読ませる本が存在する。そしてこの場合は読む側に前提と…
ヒルコ—棄てられた謎の神 井塚章文の本棚

ヒルコ—棄てられた謎の神

なにを言いたいのかわからない本である。古代史の本はだいたいそうなのだが。タイトルになっている古事記の水蛭子の謎を解く本かと思っていると最後の方には徐福伝説が出てきたりする。要は中国からの渡来民のことが「葦船に入れて流し去」ったヒルコに暗示されているということかと思うとそうでもないらしい・・・。「紀氏…
庶民に愛された地獄信仰の謎 小野小町は奪衣婆になったのか (講談社プラスアルファ新書) 井塚章文の本棚

庶民に愛された地獄信仰の謎 小野小町は奪衣婆になったのか (講談社プラスアルファ新書)

基本的には流行の廃墟巡り的な妄想全開の内容だが案外学者の書く本より説得力がある。フットワークのよさ体験談の強みである。テーマはいかに地獄が日本人にとって身近な存在かを説いている。なぜなら観光地にはよく地獄があるではないかという論理が凄い。特に追求しているのが奪衣婆。日本独自のキャラクターらしいのだが…
危ない精神分析―マインドハッカーたちの詐術 井塚章文の本棚

危ない精神分析―マインドハッカーたちの詐術

実は最近改訂版が出ている。「怪しいPTSD」(中公文庫)である。コチラの方が内容に合ったタイトルである。PTSD(心的外傷後ストレス障害)だといわれ原因は幼児期の性的虐待だったということで親を告訴する事件がアメリカで盛んになった。これは記憶回復療法というカウンセリングの手法に問題があったのだそうだ。…
江戸の歴史は隠れキリシタンによって作られた (講談社プラスアルファ新書) 井塚章文の本棚

江戸の歴史は隠れキリシタンによって作られた (講談社プラスアルファ新書)

とんでも本かと思ったら意外や意外けっこう当ってる気がした。内容は豊富。キリシタンや影響を受けたのではと紹介された面々は以下のとおり。遠山金四郎、近松門左衛門、中江藤樹、千利休、出雲阿国、由比正雪、葛飾北斎、菱川師宣、関孝和、平田篤胤、大久保長安。そして文化としては医学、草津温泉、土木、建築、鉱山、島…