歴史(2類)

日本を再発明する 井塚章文の本棚

日本を再発明する

優れた本だ。こういう本がよく読まれているというのは日本の読書人のレベルの高さである。もっとも日本論は皆、よく売れるのかもしれない。実は褒めたのは日本論というより国家論民族論というより高次の内容だと思ったからなのだが。そういう意味でタイトルは正しい。よくある再発見ではなく再発明で正しいのだ。しかしわか…
カラー版地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇 井塚章文の本棚

カラー版地図と愉しむ東京歴史散歩 地形篇

同じタイトルの3冊目は東京が結構高低差のある都市だという意味からか地形篇となっている。私は前の2冊は読んでいないのだがこれは面白かった。高低差ということは高い方は山、低い方は川だということである。勿論、山や川といっても深山幽谷というわけではない。だが数十メートルの高低差でもやはり崖は崖である。両者の…
謎の独立国家ソマリランド 井塚章文の本棚

謎の独立国家ソマリランド

高野秀行が面白い。4冊読んだがどれも面白かった。「アジア未知動物紀行」「間違う力」「未来国家ブータン」とここまではタイトルからして際物である。そして今回読んだのが「謎の独立国家ソマリランド」。堂々の500p超え、本気度が違う。第35回(2013年)講談社ノンフィクション賞受賞作である。 刊行は今年だ…
未来国家ブータン 井塚章文の本棚

未来国家ブータン

高野秀行の「アジア未知動物紀行」の感想を「紀行文学の傑作だといっていい」と書いた。本書はさらにいい。ないしろ「ブータン政府公認プロジェクトで雪男探し」なのだ。「伝統的知識」と呼ばれる例えば伝承された薬草に新薬開発の成分となる可能性があったりすることの調査が建前なのだがブータン奥地に雪男を探すのが本当…
血盟団事件 井塚章文の本棚

血盟団事件

「血盟団事件」という言葉は知っていても詳細は知らなかった。とはいえ驚くような事実が書かれているわけではない。テロである。軍部によるそれでも個人によるそれでもない。民間団体によるテロ事件である。日蓮主義者といわれてきたが実際はもっと素朴なものだった。強いていえば弱者によるユートピア願望(世界と個人の一…
TBSテレビ『NEWS23』取材班編『綾瀬はるか「戦争」を聞く』 中島駆の本棚

TBSテレビ『NEWS23』取材班編『綾瀬はるか「戦争」を聞く』

ニュース番組の一コーナーをまとめたものだから、重厚なノンフィクション作品と比べると、広く浅くといった感は否めない。それでもテレビならではの、ある種の力技が奏功しているところもある。例えば、長崎の原爆投下翌日に撮影された一枚の写真。がれきの山に佇み、遠くを呆然と見つめている女性の姿がある。彼女の後方、…
サンダルで歩いたアフリカ大陸 井塚章文の本棚

サンダルで歩いたアフリカ大陸

てっきり「ルポ資源大陸アフリカ」の著者白戸圭一の本だと思って読んでいた。読み終えてもそう思っていてレヴューを書く段になって初めて読む著者だと知った。同じ毎日新聞のアフリカ特派員である。混同するのも無理ない。しかしなぜ本書で白戸圭一について言及していないのだろうか。私が気がつかなかっただけだろうか。せ…
贈与の歴史学 井塚章文の本棚

贈与の歴史学

タイトルは歴史学だが内容は経済史といっていいだろう。贈与のシステムがほぼ資本主義経済といっていいまでになっていた15世紀の日本の実情を大量に残っている公家や僧侶の日記から紹介している。ではなぜ当時つまり室町時代の経済システムは資本主義に移行しなかったのか。そこがよくわからなかった。戦国時代に入りこの…
日本の聖なる石を訪ねて 井塚章文の本棚

日本の聖なる石を訪ねて

流行の聖地巡礼の本。普通は神社ということになるのだがこの場合は信仰の対象になるような石のことである。巨石、奇岩の類である。範囲をどうするかという問題もありなかなか難しい。しかし石に対する信仰があるのはまた確かなことである。最初に宗教学者の鎌田東二氏との対談があって導入になっている。構成はカラー口絵、…
天皇とマッカーサーのどちらが偉い? 井塚章文の本棚

天皇とマッカーサーのどちらが偉い?

著者をご存知だろうか。若い人は知らないかも知れない。どう紹介すればいいのか悩む。1946年生まれのアメリカ在住の著述家としておこう。内容は日米関係を中心とした戦後史だろう。ただいわゆる正史ではない。個人史なのだが文化史的にとても面白かった。というのは著者の経歴が戦後史上の事件に深く、または浅く関わっ…
地図から消えた島々 井塚章文の本棚

地図から消えた島々

30代の研究者による本なので硬いがテーマは面白い。明治期の離島開発を目指した人々の物語である。別の言い方では山師という。例えばあほうどり捕獲、例えば燐鉱石採掘を目論んだのだが対象となる島が実は存在しなかったところが山師の所以である。政府もおおらかで島を見たと報告があれば海難防止のため海図に記入し貸借…
空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む 井塚章文の本棚

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

第8回開高健ノンフィクション賞受賞作である。ほとんどの人は聞いたことがないであろうチベットの奥地にツアンポー峡谷とよばれる世界最大の峡谷があるそうだ。そこの単独行のはなしである。確かに8km程度の川筋が未踏(川の場合なんというのか)だとしてそれがどうしたというのだろう。山の初登頂とは違いあまり評判に…
紀元二千六百年 消費と観光のナショナリズム (朝日選書) 井塚章文の本棚

紀元二千六百年 消費と観光のナショナリズム (朝日選書)

かねてより昔の本を見る機会があって紀元二千六百年には関心があった。エポックメイキングな年だったとは想像できるが実際はどうだったのか。本書は政府主導のこの行事をむしろ周辺の反応を見ることににり全体像を描く方法をとっている。結果政府の動向という点ではいささか期待はずれではあった。しかし観光や新聞、デパー…
遊牧夫婦 井塚章文の本棚

遊牧夫婦

保存したつもりがしていなかった。確か「最初は脳天気な夫婦の手記かと思った」と書きだした。新婚からの5年間をオーストラリアからアフリカまで旅した夫婦の話である。昔風にいうと青春記(というには歳だが)の秀作である。つまりイノセントのよさだ。もっともいまどきの若者である。じゅうぶんしたたかだ。1200ドル…
日本を問い直す 人類学者の視座 井塚章文の本棚

日本を問い直す 人類学者の視座

「母の声、川の匂い」以来4年近くたっていた。エッセイなのだが文化人類学者らしく東京の近代を聞き取りを交えながら基本は個人的な記憶がメインになっていた。 そして今回の「日本を問い直す」は日本という国の近代史をテーマとした論考である。しかし3年ちかく青土社の雑誌『現代思想』に掲載された本書はエッセイとも…