井塚章文の本棚 31 3月 2013 地図から消えた島々 30代の研究者による本なので硬いがテーマは面白い。明治期の離島開発を目指した人々の物語である。別の言い方では山師という。例えばあほうどり捕獲、例えば燐鉱石採掘を目論んだのだが対象となる島が実は存在しなかったところが山師の所以である。政府もおおらかで島を見たと報告があれば海難防止のため海図に記入し貸借… 続きを読む
井塚章文の本棚 31 3月 2013 黄金の夢の歌 津島佑子作品は「ナラ・レポート」以来。その前は「笑いオオカミ」だから、いい読者ではない。どうしても太宰治の娘という先入観から興味がなかった。しかしこの3作品、スタイル、設定、皆、違う。だけど、どれも「少年」が出てくる。今回読んだ作品が一番、わかりやすい。なにしろスタイルは完全な紀行記。でも小説なのだ… 続きを読む
電子書籍 29 3月 2013 「今週の電書」(2013/03/29) このコーナーでは、中島注目の電子書籍をご紹介します。 このたび角川が立ち上げた「ミニッツブック」からの一冊です。「コンパクト」&「低価格」が売りの電子書籍レーベル。この試みは面白いですね。『遠野物語preview』は、京極夏彦さんによる柳田國男『遠野物語』の翻案版。4月に発売予定の『遠野物語remi… 続きを読む
井塚章文の本棚 24 3月 2013 日比谷公園 少しは縁があるので読むことにした本だが大変面白かった。単なる一公園のガイドブックではなかった。一〇〇年の歴史ある日比谷公園は、明治の西洋受容の産物だったが、決してつまらぬ外国の公園のコピーではなかった。 著者は幕の内弁当だといい、公園に要求されるのは多様な利用者の満足だという。そして凄いのが維持管理… 続きを読む
電子書籍 22 3月 2013 「今週の電書」(2013/03/22) このコーナーでは、中島注目の電子書籍をご紹介します。 今年の「本屋大賞」にもノミネートされている本です。書店店頭でも目立っていますけど、電子書籍化もされていました。著者の川村さんは「悪人」「モテキ」「告白」といった話題作を手がけてきた映画プロデューサー。発売当初から注目されてましたけど、まさかここま… 続きを読む
中島駆の本棚 21 3月 2013 海街diary 鎌倉で暮らす三姉妹が、ふとしたきっかけで、腹違いの妹と暮らすことになる。姉妹の父は15年前に、別の女と家を出た。しばらくして母親も別の男と再婚。あっけなく鎌倉の家を出て行き、それ以来、姉妹は祖母の手で育てられる。長じて姉は看護師になり、次女は地元の信用金庫に就職し、三女はスポーツ量販店に勤め、それぞ… 続きを読む
電子書籍 21 3月 2013 相変わらず使いにくい電子書籍ストア(SONY Reader編) さてさて、僕が電子書籍を利用するようになって、半年余りが過ぎました。手持ちの端末は、SONY ReaderとKindle Fire HD、そしてiPhone/iPad(初代)です。E Inkを使ったReaderは活字本、モニター解像度の高いKindleはコミックという具合に使い分けています。また、… 続きを読む
中島駆の本棚 20 3月 2013 UNDER GROUND MARKET ひどい本である。著者は昨年、日本におけるダイレクトパブリッシングの成功事例として注目された藤井太洋。だがこの『UNDER GROUND MARKET』は、セルフパブリッシングではない。版元は朝日新聞出版であり、もともとは同社が発行する文芸誌『小説トリッパー 2012年冬号』に掲載されたものらしい(… 続きを読む
中島駆の本棚 19 3月 2013 立花隆の書棚 タイトルのとおり、カラー写真と立花自身の解説によって、書棚の中身を開陳するという企画。自身の裸を晒すようで、もともとそんなに乗り気ではなかったらしいのだけど、写真家・薈田純一氏の「精密書棚撮影術」という特殊技法と、棚そのものが自身の「メイキング・オブ」であることに気づいたことで、面白くなってきたと語… 続きを読む
井塚章文の本棚 17 3月 2013 新参者 ホンスミ再開、第1回投稿はこれにしようと決めていました。刊行以来3年半経過した作品。しかしそもそもこの作品雑誌掲載は2004年から2009年とそのまま執筆時期だとすると5年かかっている。少しぐらい待ってもいいではないか。 もしも最初は短篇でしかなかったのをまとまった長篇にしたのだとしたら東野圭吾の構… 続きを読む
電子書籍 16 3月 2013 「今週の電書」(2013/03/16) このコーナーでは、中島注目の電子書籍をご紹介します。 山田詠美さんの新作が早くも電子書籍になってますね。「死」と「家族」をテーマにした小説。「ダ・ヴィンチ」4月号のインタビューでは〈明日死ぬかもしれないっていうのは、私自身がいつも思っていること〉であり、それが自身の創作のメインテーマでもあると語って… 続きを読む
井塚章文の本棚 13 3月 2013 木曜日を左に曲がる 「階段を駆け上がる」の刊行が昨年の7月30日そしてこの本は今年の同じ日だった。それがどうしたか、実は表題作が「ひょっとしたら、昨年の今日」初めて出会った二人が電車に乗り合わせたところから始まる話なのだ。最後に表題作を置いた短篇集の7作品は登場人物の名前は違うがよく似た女と男が登場する。連作といってい… 続きを読む
井塚章文の本棚 13 3月 2013 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む 第8回開高健ノンフィクション賞受賞作である。ほとんどの人は聞いたことがないであろうチベットの奥地にツアンポー峡谷とよばれる世界最大の峡谷があるそうだ。そこの単独行のはなしである。確かに8km程度の川筋が未踏(川の場合なんというのか)だとしてそれがどうしたというのだろう。山の初登頂とは違いあまり評判に… 続きを読む
井塚章文の本棚 13 3月 2013 飲めば都 軽い作品である。前にも書いたが悪い意味ではない。また矛盾するようだが欲張りな本でもある。基本的に酒にまつわる連作で構成された長編小説だが出版社を舞台としている点、恋愛小説になっている点でお買い得(とはいいながら図書館で借りているのだが)な作品だ。なお推理小説家らしき謎解きの要素もあるが一番興味を持っ… 続きを読む
井塚章文の本棚 13 3月 2013 知はいかにして「再発明」されたか―アレクサンドリア図書館からインターネットまで ロングセラーになりそうな本だ。「銃・病原菌・鉄」がそうだったように壮大な内容を洗練された文章で表現している。要は学問のシステムの歴史である。 第1章 図書館 ――紀元前3世紀~西暦5世紀 第2章 修道院 ――100年~1100年 第3章 大学 ――1100年~1500年 第4章 文字の共和国 ――1… 続きを読む