月別: 2013年7月

聖痕 井塚章文の本棚

聖痕

筒井康隆に、かって「美藝公」という作品があった。当時は異色作だなあと思っていたが、「聖痕」を読んで思いだした。バロックな雰囲気が似ていたと記憶している。さて「あまりの美貌故に性器を切り取られた少年」の成長物語なのだが、エロチックな作品を想像すると見事に裏切られる。要するに性(セクシャル)が無いのだか…
プラチナデータ 井塚章文の本棚

プラチナデータ

東野圭吾は理科系出身の作家だ。だから「探偵ガリレオ」シリーズがあったりするが実はガリレオは私は評価しない。「白夜行」「秘密」「手紙」「変身」「新参者」と漢字のタイトル作品が好きだ。その点「プラチナデータ」はダメ。DNAを捜査に活用するという構想はいい。だが展開はいただけない。筆力があるから最後まで読…
神は死んだ 井塚章文の本棚

神は死んだ

短篇集とも連作集とも言えないが、まあ処女短篇集としておこう。いきなり最初の作品で神の死が宣言されてしまう。以降「神を失った世界に生きる人々の姿が描かれていく」連作と「訳者あとがき」にある。宗教小説なのか無神論小説なのか。アメリカ人らしい悩みである。「ポストモダン人類学軍」対「進化心理学軍」の戦闘とい…
もし、日本という国がなかったら 井塚章文の本棚

もし、日本という国がなかったら

日本の戦後史と著者の自伝および交遊録という感じか。タイトルは誤解を与えそうだが要するにあるタイプの人にとっては日本は良い国なのだろう。まあ白人には特にそうかもしれない。非日本人のエッセイの特徴ではないかと思うのだが文章が口語に近い気がする。もしかすると著者が書いているように会話は簡単だが文章は難しい…
地図集 井塚章文の本棚

地図集

場所と時間にこれほど敏感な作品もめずらしい。マイナー文学というものがある。メジャー文学とは英米仏独あたりだろう。イタリア現代文学はややマイナーだ。カルヴィーノという作家がいる。南米文学という不思議な括りがある。ボルヘスらが属する。今名前を上げた二人の作家は自分の文学にいわば周辺かつ中心という意識を持…
ホテル・ピーベリー 井塚章文の本棚

ホテル・ピーベリー

近藤史恵の小説も5冊目。今回はハワイが舞台。おしゃれな雰囲気が作家に似合っている。結末はそれなり。だが違う展開もありえたのではないかと思ってしまう。少なくとも桑島七生という女性はもっとストーリーにからんでいてほしかった。まあそうなると読後感はもっと暗くなってしまったかもしれないが。主人公木崎淳平の仕…
ヤマネコ・ドーム 井塚章文の本棚

ヤマネコ・ドーム

津島佑子の最新作である。今回は混血孤児たちの戦後史がテーマ。津島作品には毎度感心させられる。同じ作家とは思えないほど第一印象は異なる。それなのにやっぱり津島作品だと安心できる部分がある。永遠の少年がそうなのだがしかし今回作品では少年は歳をとる。登場人物は多い。孤児たちのホーム、主人公のミッチとカズを…
都電跡を歩く 井塚章文の本棚

都電跡を歩く

かっての我が家、つまり実家は電車通りに面していた。都電の通っていた道をこう呼ぶのだ。だから今、実家に出かけると通行量の割りにはいやに幅広い道であることに気づく。今は勿論、都バスが代わりに走っている。かって走っていたのは22系統といった。ヘッドマークに22とあった。部屋にはそのヘッドマークをつけた都電…