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余部鉄橋物語

1932年生まれの田村喜子の書き下ろし作品。出版社(新潮社)はノンフィクション・ノベルというが、ノベルは余計だと思う。著者は「京都インクライン物語」で有名な土木分野を得意とするめずらしい作家である。余部鉄橋のあるのは山陰本線で住所は兵庫県香美町だが著者のホームグランドの京都が始発駅となっているから詳しいはずである。その余部鉄橋が百年の歴史を終えたこの夏に本書は刊行されたのだった。元々小学校の地図帳にも紹介されていた鉄橋は有名だったが強風により列車が転落した事故があり今年コンクリート橋に付け替えられたのだった。実は私はこの余部鉄橋を通りたいために山陰本線の旅の終着を京都二条駅にしたことがある。38年まえだったか。この旅行は思い出の多い旅だったが大晦日の深夜だったかに辿りついた鉄道ファンなら知っている二条駅の記憶はあるが余部鉄橋は知らないうちに通過してしまったのか夜だったのでなにも見えなかったかだったように思う。「明治日本の威信をかけて建設に挑んだ技術陣、命がけで錆から鉄肌を守り続けた大正・昭和の「橋守」魂、「陸の孤島」余部の切なる願い。山陰本線の絶景と直下に暮らす人々を描く」。