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日本を問い直す 人類学者の視座

「母の声、川の匂い」以来4年近くたっていた。エッセイなのだが文化人類学者らしく東京の近代を聞き取りを交えながら基本は個人的な記憶がメインになっていた。 そして今回の「日本を問い直す」は日本という国の近代史をテーマとした論考である。しかし3年ちかく青土社の雑誌『現代思想』に掲載された本書はエッセイとも読める。映画や小説への言及も多い。だがそれより果たして日本史の本といっていいのだろうかという思いが強い。サブタイトルである「人類学者の視座」から見ればフランスとアルジェリアの関係、ナチスドイツ、台湾の歴史は全て著者の関心事なのである。戦争責任・人種差別・文化的アイデンティティー・・・川田順造という碩学の書いた本書は決して難しい本ではない。雑誌掲載ということでほどよい纏まりを次号に引き継いでいく。その際、前号の最後の部分を繰り返すことが復習のようで心地良い。内容は高度だ。日本人とはなにか、国民国家とはなにか、戦争責任とは深く考えさせる。著者に並走することが出来る仕組み、おそらく著者は思想家であり教育者ではないと考えていると想像するのだが私にとってはこれほど知識と考え方を伝授してくれる教師はまずいない。