すべての好奇心をレビューする――「ホンスミ!」

TOKYOオリンピック物語

同じ著者の本は06年に96年刊の「エッシャーが僕らの夢だった」を読んで以来だった。ところがこの本のあとがきに「取材を始めたのは95年」と書かれている。想像するに「エッシャー」を書き終えて取り掛かったのがこの本だったのではないだろうか。それだけの内容だった。オリンピックの本といえば普通は選手中心になる。そうでなければ政治や運営についてであることが多い。確かに広い意味ではこの本も「運営」部分を扱っている。周辺に位置する事柄ではあるが。
まずはマークやポスターという美術について。亀倉雄策たちである。次はコンピュータシステム。日本IBMの技術者たちだ。次が選手村の食事。村上信夫たちだ。そして警備。セコムの話だ。映画「東京オリンピック」市川崑たちだ。実は最初に書いた95年から取材を開始したということの意味がこれらの人名に関係する。皆、既に亡くなっているのだ。特に亀倉雄策は97年死去だから。ノンフィクションは時に長期の取材が必要になる。だが15年を費やした作品というのはめずらしい。例えば亀倉雄策たちを扱っただけで1冊の本にすることは可能だったのではないか。しかし著者はあえて複数のテーマで1冊の本にした。これはこの本のテーマが64年の日本を描きたかったからではないだろうか。そう戦後日本の青春期である。
今年の東京都知事選で石原慎太郎が再選した。こうなったらぜひオリンピック誘致を成功させて引退してほしい。東日本大震災は敗戦以来の日本の最大の危機だろう。ぜひ復興した日本で開かれる東京オリンピックを見てみたい。