すべての好奇心をレビューする――「ホンスミ!」

UNDER GROUND MARKET


 ひどい本である。著者は昨年、日本におけるダイレクトパブリッシングの成功事例として注目された藤井太洋。だがこの『UNDER GROUND MARKET』は、セルフパブリッシングではない。版元は朝日新聞出版であり、もともとは同社が発行する文芸誌『小説トリッパー 2012年冬号』に掲載されたものらしい(http://book.asahi.com/booknews/update/2013021400005.html)。つまり紙媒体で発表されたものを、今回敢えて、電子書籍というかたちで出版したということである。しかし、その版元の仕事があまりに杜撰なのだ。

 まず、目次に記された著者の名前が「藤井太陽」となっている(正しくは、太洋。その後、改訂されたかもしれないが、僕が購入した版ではそうなっている:下記スクリーンショット参照)。著者の名前を間違ったまま製本し、販売してしまうなど、紙の書籍ではありえない。回収、という事態もあり得るほどの重大なミスだ。それほどまでに重大なミスを、紙の本に換算して23ページしかない本書で犯してしまったということはどういうことか? 編集者の無能ぶりをさらけ出しているとしか言いようがない。

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 さらにもう一点。本書には、朝日新聞社デジタル事業本部の林智彦という人物による「解説」がついている。この「解説」が、書籍全体の3割に及ぶ。たかが短編一本にこれほど長い解説が、はたして必要だろうか? ご丁寧に『UNDER GROUND MARKET』のあらすじまで「解説」してくれているのだが、そんなものは本編を読めばわかる。たかが、20ページ足らずの話なのだから。

 これほど(本編に対して)長い解説があるのならば、アマゾンの詳細ページできちんと説明しておくべきではないか。23ページとはいえ、話題の著者の作品だから僕は購入したのである。しかし買ってみたら別人の書いた「解説」とやらがやたら目立ち、本編は20ページにも満たない。

 例えばこれが紙の書籍として刊行され、書店で手に取ったとしたら、僕はぜったいに購入しなかったと思う。たとえ100円でも。看板に偽りがあることがひと目でわかるからだ。だが、電子書籍ではその確認ができない。ここに電子書籍の落とし穴がある。これは他の書籍での話だが、実際に購入してみたら、表紙とあとがきしかなかったということもあった。これも紙の書籍ではあり得ない落丁だ。表紙とあとがきしかない本が書店店頭に並ぶことなどあり得ないからだ。しかし、電子書籍ではそんなあり得ない本が存在するし、読者は購入するまでその落丁に気づくことができない。

 今回最も腹立たしく思うのは、大手出版社がこうしたお粗末な仕事をしてしまったということである。せっかくの有望な作家の芽を潰しかねない愚行だと思う。真摯に反省して頂きたい。