すべての好奇心をレビューする――「ホンスミ!」

黄金の夢の歌

津島佑子作品は「ナラ・レポート」以来。その前は「笑いオオカミ」だから、いい読者ではない。どうしても太宰治の娘という先入観から興味がなかった。しかしこの3作品、スタイル、設定、皆、違う。だけど、どれも「少年」が出てくる。今回読んだ作品が一番、わかりやすい。なにしろスタイルは完全な紀行記。でも小説なのだ。というのは幼くして死んだ息子が見え隠れするから。

さて紀行と書いた。確かにキルギスと中国東北部が舞台。旅行の目的は「夢の歌」探し。これはキルギスの英雄叙事詩らしい。しかしそこはアジアの内陸部、民族の移動、変遷が凄い。東の端は日本、「ナラ・レポート」にも、ましてやアイヌには、その遺産が残る。そして津島佑子は津軽人の末裔なのだった。思えば津軽の地に遮光器土偶を見学したいと訪れたことがあった。しかし土偶はこの地にはない。

たしか東京の国立博物館にあると書かれていた記憶がある。言っては悪いが津軽半島は不毛の地である。ひとりでドライブしていてあれほど心細い思いをしたことがない。そしてキルギスである。多くの遺跡がある。しかし出土品の優品は皆モスクワに持っていかれたという。下北半島の恐山でも感じた「辺境」。行ったこともないキルギスだがもしかして私も青森で夢の歌を聞いていたのかもしれない。2度も書いた「紀行」だが、読み終えての感想は422pもある長大な叙事詩を読んだそれだった。