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裁かれた命

古い事件の話である。死刑囚が主人公なのだが事件そのものはいわゆる冤罪ではない。22歳の犯人・長谷川武は、裁判でさしたる弁明もせず、半年後に死刑判決をうけ、5年後には刑が執行された。しかし死刑を求刑した元検事は後悔している。なぜなら武は人生をやり直すことが出来たと思えるからだ。武から検事に手紙が届く。そこには恨みの言葉はなかった。不幸だが知性を持った青年だった。1966年の古い事件である。今なら違ったはずの事件だ。そもそも被害者が一人で死刑判決はまずない。でも死刑制度そのものに対する疑問がある。 著者は被害者のことは書いていない。もっぱら武がどんな人生を過ごしたかを追求する。死刑囚の母は自殺した。2010年にNHK-ETV特集で放送された番組にその後の取材を加えた本である。中心は武が、独房から関係者に送っていた手紙。講談社ノンフィクション賞受賞後第一作。安易な捜査、裁判が簡単に死刑判決を下すことの意味が問われている。