すべての好奇心をレビューする――「ホンスミ!」

冥土めぐり

前回の芥川賞受賞作品。それにしても芥川賞受賞作を読むのはひさしぶりだ。60年代、70年代はそれでも関心があった。村上龍の「限りなく透明に近いブルー」は色々な意味で記憶にあるのだがもはや古典だろう。「太陽の季節」「されどわれらが日々──」とほぼ10年毎の話題作を並べるとさながら戦後史のようだ。しかし今の芥川賞にそういう時代のイコンになるような作品があるのだろうか。
読んでもいない者がなにを言っても始まらないので「冥土めぐり」について。中篇2作品の雰囲気は全く異なる。しかし不思議なことに読後感は一緒だった。それは、この2作品は「聖人」を描いたものではないのだろうかというものだった。なにやら崇高なものを感じたのだった。「冥土めぐり」は一見、どうしようもない家族と暮らす諦めきった女性が主人公である。主人公にも宗教的な境地を見出だせるが私が「聖人」と言ったのは、その夫の方だ。夫は障害者である。夫は自分の境遇に異を唱えない。諦観によってではなくあるがままを受け入れるという天性のものである。「99の接吻」は4姉妹の物語である。なぜ4姉妹というのはしばしば小説の題材になるのだろう。まあ、それはいい。かなりエロティック(古いか)な描写だが不思議と最後のシーンには宗教的なものを感じた。世俗を超越した滅び行く種族といったところか。