すべての好奇心をレビューする――「ホンスミ!」

幻坂

大阪の「天王寺七坂」という地域が舞台のホラー短篇集。最初の「清水坂」はまあ普通の出来と思っていたら地霊のなせる技かだんだん物語世界に引きこまれてしまった。私は大さくには二度しか行った記憶がない。京都なら何十回はおおげさにしても2ケタ以上行ったはっきりした記憶がある。ところが読んでいてだんだんなつかしいように気になってきたのだった。東京は一部からは坂の街といわれている。まあ台東区というそのまま坂があることから付いた場所で生まれているのだがあいにく元は2つの区の合併で誕生したとき付けられた「台」の方(上野)ではなく「東」の方(浅草)だったのであまり坂には縁がなかった。しかし私の生まれた場所は寺町だった。交差点の三隅が寺というような場所である。民家も地主は寺(私の実家も)という場所である。そう、この小説集、寺町物語とも言えるのだった。「七坂を舞台に歴史的因縁や文化的背景を織り交ぜながら、大阪の人々をリアルに叙情的に描いた」作品に「傑作と話題沸騰の、大阪で頓死したといわれる芭蕉の最期を怪談に昇華した「枯野」」と「難波の夕陽に心奪われた平安時代の歌人・藤原家隆の終焉の地となった「夕陽庵」を含む9作品。とてもお買い得な作品集でした。