すべての好奇心をレビューする――「ホンスミ!」

諏訪根自子

面白かった。昭和のヴァイオリニストの生涯を描いた評伝。波瀾万丈の一生だったが特に第二次大戦中のベルリンに留まり在独大使館員たちとアメリカ経由で帰国する部分が興味深い。しかしそんな大文字の歴史に全く影響されていない音楽芸術との対比が本書の中心部分である。もっとジャーナリスティックに描くこともできたはずだ。彼女の結婚のいきさつやゲッベルスから贈られたストラディヴァリウスの話は普通のノンフィクション作家だったらもっとつっこむところだろう。しかし作者は音楽評論家なので天才的なヴァイオリニストとしての主人公に迫って書いている。