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相田家のグッドバイ

わたしにとってはひさびさの森博嗣作品。まったく趣が違う「相田家」は平成時代の私小説である。ここには貧困も成り上がりも登場しない。インテリ家庭小説というのは昔もあったろうがそれは特殊な家柄の話であったのではないか。相田家は普通の家である。強いて言えば時代がよかった。勿論、父秋雄は頭がよかった。だが基本的には真面目な小市民である。母紗江子も主婦として秀でていただろう。ちょっと極端ではあったようだが。それだって夫婦どちらも平凡という組み合わせとくらべて特殊とまではいえない。最後はあまり小市民とは言えない状況になるのだが、それだって余生を海外で暮らすことはことさら珍しいことではなくなっているようなので許容範囲だろう。以上は作者に近い世代である私の体験からの感想である。勿論我が家と相田家はとは違う。だが戦後をそれぞれの苦労はあっても順調な暮らしを築いてきた親と子の世代は相田家に共感できる人が多いと思う。私の子ども、相田家の息子である紀彦の子どもたちの将来はもっと苦労が多そうだが。私小説といえば山口瞳の「血族」を思い出す。「family」という欧文タイトルがあったはずで勿論森博嗣作品でお約束の欧文タイトル(今回は「Running in the Blood」と全く関係がないが面白かった。山口瞳作品が昭和を代表する私小説なら「相田家のグッドバイ」はある意味平成を代表するそれかもしれない。