すべての好奇心をレビューする――「ホンスミ!」

さわり

「さわり」とは元々、三味線や琵琶といった邦楽器の構造で糸を本体に触れさせ、その音とともに 軽い雑音を生じさせるものらしい(表紙の写真はその場所か)のですが転じて(どう転じるのか不明ですが)最大の聞かせどころを意味するようになったらしい。さらに物語の最初の部分と誤用されているという。本書で特にこの言葉を解説した箇所は記憶にない。

琵琶師のはなしである。評伝は面白い。主人公のように現代において誰もが知っている人ではない場合、特に面白い。知識という部分と人の一生の物語としても興味深い。

ただし、その半面、話題が豊富すぎると読者の理解を超えてしまうことになる。本書がそうだった。いっそもっと大部な本にして主人公鶴田錦史に絞った方がよかったかもしれない。勿論いささか異常な世界が背景にあるのだからそこを抜きにして書くことも困難だったのだろう。例えば「序の舞」の宮尾登美子が小説として書いたらどんな内容になっていただろう。「男装の天才琵琶師」鶴田錦史は小澤征爾指揮でニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団による武満徹作『ノヴェンバー・ステップス』初演で琵琶を演奏したという。ところが普通なら一番活躍していいはずの中年期は実業家だったのだという。2010年、第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品。