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TBSテレビ『NEWS23』取材班編『綾瀬はるか「戦争」を聞く』

ニュース番組の一コーナーをまとめたものだから、重厚なノンフィクション作品と比べると、広く浅くといった感は否めない。それでもテレビならではの、ある種の力技が奏功しているところもある。例えば、長崎の原爆投下翌日に撮影された一枚の写真。がれきの山に佇み、遠くを呆然と見つめている女性の姿がある。彼女の後方、足元近くには真っ黒に焼け焦げた遺体。写真は多くの情報をもたらしてくれるけれども、不明な点もある。「この遺体は誰なのか?」「彼女が目を向けている先には何があったのか?」

その疑問をきっかけにして、写真の女性の探索が始まる。テレビの取材班にとってみればわけもない仕事だろう。やがて女性はカメラの前に現れ、綾瀬に向かって当時の様子を語る。記憶がぼやけていた箇所も、語ることでやがて鮮明になってくる。それは女性にとって、とてもつらいことだ。けれども彼女がカメラの前に立ったのは、テレビの力だけでないのだろう。これはこの本に登場するすべての人にいえることなのだが、彼らに働きかけているのは「語り継がなければ」という使命感だ。

こうして写真の風景がより鮮明になる。遺体は彼女の母親のものだった。彼女の自宅は爆心地のすぐ近くで、たまたま彼女と父親は家を離れていて難を逃れた。翌日、自宅に戻ってみると、そこに母親の焼け焦げた遺体があった。では彼女は、母親に背を向けて何を見ていたのか。記憶を少しずつ辿ると、見えてきたのは父親の姿だった。このとき、自宅近くの薬局の防空壕に少女が取り残されていた。近所の女の子だから、彼女にも見覚えがある。彼女の父親は、その少女の救出にあたっていたのだ。少女の名前は「耐子さん」といった。

取材班はその「耐子さん」のその後にも目を向け、やがて写真の少女と、救出された「耐子」さんは再会を果たす。どちらも子どもだったし、長崎を離れて暮らす「耐子さん」にとって、被曝の体験はあまり口にしたくはない。「再会」というセッティングは、テレビではお約束ともいえる手法だから、そこに異を唱えることはできる。そこまでしなくてもいいんじゃないかと。それでも「再会」することで、ふたりの時間に新たな息吹が吹き込まれたとしたら(すくなくとも僕にはそう読めた)、やはりこれはテレビの力だからこそ果たし得たことなのだと思う。

ナビゲーターを務める綾瀬はるかは、今でこそ人気女優だけども、このコーナーを始めたころはまだ新進の女優というぐらい。広島出身の彼女の祖母は、姉を原爆で亡くしていて、祖母へのインタビューがこの本の巻頭に配されている。日付は2005年。多くのインタビューは2010年ごろに行われているから、彼女のブレイクとともに企画が復活したということなのかもしれない。ときに「天然」と評される綾瀬だが、その魅力ゆえに重い口を開いたという人も多かったのではないだろうか。だからこれは、綾瀬はるかだからこそなし得た仕事なのだと思う。