すべての好奇心をレビューする――「ホンスミ!」

完全なるチェス

チェスの世界チャンピオンになった人物の伝記なのだが別にチェスを知らなくってもかまわない本だ。それだけこの主人公ボビー・フィッシャーが興味深い人物だということである。移民のシングルマザーの子供であるボビーは最近流行りの言葉でいうと発達障害のある天才ということになるのでしょう。異常な集中力持続力により若くしてアメリカ一のチェスプレイヤーになったボビーだが当時(今も?)は世界チャンピオンはソ連が独占していた。冷戦の象徴としてのアメリカ人初のチェス世界チャンピオンにはなったが過激な言動から世界を敵に回してしまう。アメリカ政府から逮捕状が出て世界を放浪することになり遂に日本で拘束されアイスランドに亡命しそこで生涯を終えた。色々な読み方が出来る。アメリカ人の一典型とも言える。このタイプの天才のもろさとも言える。周囲がなぜボビーを援助したのか。迷惑な存在だが常識人には魅力的だったのだろう。なぜ世界チャンピオンとして君臨し続けなかったのか。出来たはずであった。しかし彼は出来なかった。そういうタイプだったのだろう。頂点を極め、しかしすぐ陥落してしまう、スポーツには時に出現するタイプである。ただ不思議なのはそういうタイプとチェスという競技が全く似合わないということである。まあ日本の将棋だったかの世界でも顰蹙をかった名人?がいたような記憶があるからなんとも言えない。自分とは全く縁のない世界の話だ。そういう世界を覗けるのが読書の楽しみであり自分はこちらの世界の住人なのだった。